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南アフリカがジェンダー多様性に配慮したIDカードの導入を計画-新たな制度がLGBTQの現状を変えるのか【Pick-Up! アフリカ Vol. 241:2021年11月30日配信】

題:南アフリカの新たなIDシステム

英題:New ID system planned for South Africa

記事リンク:https://businesstech.co.za/news/government/534602/new-id-system-planned-for-south-africa/

内容と背景:

こんばんは!Pick-Up!アフリカをご覧いただきありがとうございます。

本日は南アフリカで導入が予定されているジェンダー多様性に配慮した新しいIDカードのシステムについての記事をご紹介します。今回はそれに関連して、南アフリカでのセクシュアルマイノリティーに関する制度と国内の現状もご紹介しながら、この新しいシステムがLGBTQの人々が抱えている問題を改善することができるのかについてお話していきます。

IDカードというのは持ち主の氏名、顔写真、生年月日、性別、国籍といった個人情報が記載されているもので、南アフリカで身分証明書として利用されているものです。基本的にこのカードは戸籍のある南アフリカ在住者全てに与えられるもので、行政機関のサービスを受けるときや銀行口座の開設時などに必要となります。

このIDカードはアパルトヘイトの時代のIDブックと呼ばれる個人情報管理システムが変化したものであり、アパルトヘイトの当時は白人と黒人で異なったIDブックが付与され、黒人の居住エリアや職業が制限されていました。その後アパルトヘイトが終了してからは人種問わずグリーンブックと呼ばれる同種のIDブックが与えられるようになりましたが、詐欺や窃盗が蔓延したことでデータ管理を導入した現在のIDカードが使われるようになりました。(文末記事1)

ジェンダーに配慮した新たなIDカードのシステム

今回の記事では、こうした変化を遂げてきたIDカードにさらに新たなシステムが導入される予定であることが示されています。

具体的に今回採用される新しいシステムでは、生年月日、性別、国籍といった情報を示している13桁のIDナンバーの表記方法の変更や、より詳しい生体情報の登録によってセキュリティーの強化を図ることによって、時代にあったシステムを導入することが提案されています。

また記事では、こうした新たな変化の中でも重要性の高いものとして、男性か女性か2種類のみに限られている性別の表記方法を変更し、ジェンダーについての柔軟性を高めようとしていることが挙げられています。

具体的な変更案としては、13桁のIDナンバーの中で性別を表している4桁の番号に、性別を表さない中立的な番号の仕組みを追加する案や、IDナンバーを暗号化して一目ではカードに記載されている性別が分からないようにする案があるとされていますが、こうした変更には、LGBTQのうちインターセクシュアル、トランスジェンダーといった人々が、2つの選択肢しかない現行の性別表記システムの中で抱えている問題を解決する目的があります。

実際に現行のシステムでの問題に関して、こちらの記事では、インターセクシュアルである人物が現行のIDシステム下での社会的な生きづらさについて語っています。自分は女性ではないのに、生まれたときにつけられた女性というアイデンティティーがIDカード上に残り続けていることに強い不快感を抱き、自身のIDカードを捨ててしまったために受けられる社会的サービスが制限されてしまったことが話されています。

またこちらの記事では、IDカードを持っている場合でも、インターセクシュアルやトランスジェンダーの人物は身分証明ができず銀行口座を開けない場合があるという事実が共有されています。

こうした問題が蔓延する中で南アフリカ政府は国民から1000通ものIDカードの変更提案書を受け、問題の解決のためにジェンダーに配慮したIDカードの導入というアフリカ初の試みを行うこととなりました。

先進的な南アフリカのジェンダー制度

この新しいIDシステムの導入の中で、記事でも特にジェンダーに関して重く扱われていましたので、ここからは少し南アフリカのジェンターに関して今一度状況をみてみたいと思います。

この取り組みは世界的に見ても新しい取り組みですが、こちらの記事では南アフリカが他にも先進的なジェンダー制度を取り入れていることが紹介されています。

実際、今回ご紹介する記事では、アパルトヘイトが終了したのちに台頭してきた新しい指導者たちが表現の自由やジェンダー平等に関する包括的な法律を制定し、1997年には憲法に「性的指向による差別の禁止」が明記されるなどしたことで現在、南アフリカではLGBTQに関しての先進的な法律が制定されているという事実が共有されています。

またこちらの記事では、南アフリカが現在アフリカ大陸の国で唯一法律で同性婚を認めている国であることが紹介されています。記事では、同性カップルは養子の受け入れや体外受精、代理出産を行うことが認められており、雇用やサービス提供においても差別は禁止されていることから、「LGBTの人々はLGBTではない人と同じ権利を享受している」と評価する声もあることが示されています。

南アフリカのジェンダー差別の実態

こうした政府の取り組みによって「虹の国」とも言われる南アフリカですが、実際のところ、国内でまだまだLGBTQに対する差別や暴力があることが先ほどの記事(文末記事4)に述べられています。

実際に記事中のデータでは、調査を行った約2000人のLGBTQの人々のうち、2年以内に39%が言葉で侮辱され、20%が危害を加えると脅され、17%が追いかけられたり、後ろをつけられたりし、10%近くが身体的に攻撃されたことがあるという事実が示されています。また、黒人回答者の約半数が、身近に性的指向を理由に殺害された人を知っているというデータも紹介されています。

また南アフリカの制度面での進歩や、「虹の国」としての評判を耳にした多数のLGBTQの難民が南アフリカに入国しているのですが、南アフリカに存在する外国人差別とLGBTQ差別によって彼らがひどく不安定な状況下に置かれていることも紹介されており、2008年に大規模な暴力が発生して以来、数千人が避難生活を余儀なくされていたという事実が共有されています。

そしてこちらの記事では、南アフリカの難民認定局が法的原則違反といった不適切な処置を行い、多数のLGBTQの難民からの難民申請を拒否していたなど、公的機関内でもLGBTQに対する差別があることが紹介されています。難民申請が拒否されればIDカードを手に入れることができないので、彼らは社会サービスや国からの保護を受けることができず、厳しい生活を強いられることとなります。

これらのことから、南アフリカでは政府が制度や法律で保障した内容と国内でのLGBTQ差別の現状に大きな乖離が存在していることが見えてきます。このように、制度が十分でもその施行が不十分である状況では、新しいIDカードシステムがその潜在的な効果を発揮することができず、十分な問題解決に至らない可能性があります。そのため、警察や行政といった制度の施行力を高める機関を強化するとともに、教育などの分野と連携してLGBTQに対する社会の許容度を高め、制度が効果を発揮するための環境を作る必要があると思います。

この件について新しい情報が入りましたら今後お伝えさせていただきます。よろしければ下記の参考記事もぜひご覧ください。

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