題:ガーナで太陽光発電を利用した新たなコールドチェーンが話題:食品ロス&環境問題を一気に解決!?
訳 : 太陽エネルギーを使って農作物を冷蔵保存?太陽光発電冷蔵庫から、ガーナの農家はどのように利益を得るのか。
英題:‘Using the sun to keep agricultural produce cool? How Ghana’s farmers are benefiting from solar-powered cold storage’
記事リンク:https://www.weforum.org/agenda/2022/09/ghana-akofresh-solar-powered-cold-storage/
キーワード:農業 ポストハーベストロス CO₂削減 コールドチェーン
こんばんは!Pick-up!アフリカです。いつも記事をご覧いただき、ありがとうございます。
さて今回ご紹介するのは、アフリカのコールドチェーンに関する新たなサービスについてのニュースです。
アフリカの農業セクターでは、食料需給の不安定さという観点から、コールドチェーンの整備の必要性が近年盛んに議論されています。以前我々が扱ったアフリカにおけるコールドチェーンの重要性に関する記事によると、サブサハラアフリカの国々では2億3千万人が慢性的な栄養不足に陥っており、その原因の一つとして、収穫から市場までの間に30~50%の農作物が廃棄されていることが指摘されています。
コールドチェーンの整備が遅れている理由として挙げられているのが、主に輸送インフラ(冷蔵能力を備えたロジスティクスの不足)と電力インフラの未整備です。特に電力インフラに関しては、依然として農家世帯の電力へのアクセスが低く、先の過去記事によると、2018年時点でアフリカで生鮮野菜を生産している1000万世帯の小規模農家のうち、電力へのアクセスがある世帯はわずか36%にしか満たず、さらにそのうち冷蔵技術にアクセスできる経済的な余裕がある世帯は全体の2%であると記されています。
このことから、近年アフリカ各国でスタートアップ企業を中心にコールドチェーン事業への新規事業の進出が進んでいます。特にロジスティクス分野でのビジネスによる課題解決のイノベーションはアフリカ各国で多くの企業が進出しており、私たちの記事でも過去にいくつかご紹介しています(過去記事1, 2, 3)
そんな中で今回ご紹介するニュースでは、小規模農家の農産物の保存に着目した新しいサービスを取り扱っています。
ガーナのスタートアップ企業であるAkoFresh社は、農家を対象としてソーラーパネルを用いた太陽光発電の冷蔵庫の貸し出しサービスを提供しています。
まず初めに、ガーナの農業セクターにおける現在の課題について説明します。こちらの別の記事ではガーナの農産物販売における課題について指摘しており、記事によると、ガーナの小規模農家の88%が直接的な販売(他の業者を介さず、直売所形式や農家本人が直接販売する形式)を取っており、農作物のうち40%が売れ残り、廃棄または知人に配布されているといいます。
さらに記事内では、輸送インフラが未整備であることから、農産物が市場に届く前にいくつか廃棄されてしまうこと、情報へのアクセスが低く、口コミによる顧客の獲得に依存していることが課題として指摘されています。
今回ご紹介するニュースによると、この冷蔵庫貸し出しサービスを利用することで、生鮮食品の保存期間をこれまでの5日間から21日間に引き延ばすことが可能となったようです。これにより、市場へのアクセスが困難な農家であっても、農産物の廃棄量を減らすことができます。
サービスの利用料は、20kg分のスペースを1日につき0.3$で借りることができるほか、週単位でのサブスクリプションでの利用も可能とのことです。また現金による支払のみではなく、農産物による支払いも可能であり、小規模農家のサービス導入に際する経済的なハードルを緩和しています。
さらに、同社が提供しているこの冷蔵庫はアプリと連携して在庫管理を行うことが可能となっており、このアプリを通じて、農家と農作物の卸売り業者とのマッチングを行っています。それにより、小規模農家が適正な市場価格で農産物を売る機会を増やすことにつながっています。
今回ご紹介したニュースで特筆すべきなのは、太陽光発電を用いた冷蔵庫を提供することでポストハーベストロスの問題だけでなく、電力へのアクセス、またグリーンエネルギーへの転換というアフリカ各国が抱えるその他の課題にもソリューションを提示していることです。
先ほども述べたように、アフリカにおける電力インフラの未整備、供給不足は近年大きな課題となっています。世界銀行の統計データによると、近年サブサハラアフリカにおける電力へのアクセスは急激に増加しているものの、2020年時点で全人口の48.4%しか安定した電力供給を得られていないことが示されています。
引用元の記事によると、AkoFresh社は太陽光発電の冷蔵庫からスマートフォンなどの充電用の電力が供給できると記されており、電力インフラが未整備である地域において貴重な電力の供給源になると見られています。
環境問題に対する取り組みとしても、同社はこのビジネスを通じて一つの解決策を提示しています。引用元の記事内で同社は、この冷蔵庫を使用することで毎月16.5トンのCO2排出量の削減に貢献していると述べています。
アフリカではしばしば、グリーンエネルギーへの転換が課題として挙げられているほか(アフリカの気候変動への取り組みは?)、昨今の世界情勢の影響による石油燃料価格の高騰は、アフリカにも影響を与えています(ロシアのウクライナ侵攻に対する各国の立場)。
再生可能エネルギーへの転換という側面も考慮すると、今回の取り組みはまさに一石三鳥のアイデアであると言えるでしょう。
今後AkoFresh社は、5年から10年の間に、ガーナの10地域でポストハーベストロスの量を半分に削減したいと語っています。これにより、1作期あたりの農家収入は1000万ドル以上増加し、CO2排出量も15%以上削減できる見込みであると記事内では述べられています。
今後同社のサービスがどのように拡大していくのか、今後の動きに注目が集まりそうです。
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