題:女性の権利向上がアフリカ農業に与える影響|土地の権利と食糧生産の関係
訳 : 第6回アフリカ農業エキスポで明らかとなった、アフリカ農業における女性と若者の重要性
英題:‘Importance of women and youth in African agriculture highlighted at 6th Africa Agri Expo 2023’
記事リンク:https://www.en.krishakjagat.org/biopesticides-biocontrols/importance-of-women-and-youth-in-african-agriculture-highlighted-at-6th-africa-agri-expo-2023/
キーワード:農業 女性進出 若者 エンパワーメント
こんばんは!Pick-up!アフリカです。いつも記事をご覧いただき、ありがとうございます。
先日3月8日は、国際女性デーでした。アフリカは未だ女性の社会進出が遅れている国が多く存在しており、AU(アフリカ連合)が定めたアジェンダ2063内の目標設定にも男女平等、ならびに女性のエンパワーメントが記されています。(詳しくはこちら)
そのような背景から、各産業界で女性進出に向けた取り組みが行われつつあります。
私たちが過去に紹介したところでは、ハイテク産業(STEM産業)で女性専門家の育成が行われていたり、女性起業家を支援する機関が立ち上がるなど、ビジネス界隈を中心に女性の社会進出が整備されつつあります。
そんな中本記事では、アフリカの農業における女性のエンパワーメントに対する課題と影響についてご紹介します。
女性が支えるアフリカの農業
今回引用した記事では、2023年2月8、9日にケニアのナイロビで開催された第6回アフリカ農業エキスポの内容について取り上げています。
アフリカ及び世界各国の専門家が一堂に介した、同エキスポ内の有識者会議では、アフリカ農業における女性および若者のエンパワーメントの促進についても議論がなされました。
引用元の記事は、同エキスポに参加した、農業技術・食問題の解決のための活動を行っているNPO団体CABI(Centre for Agriculture and Bioscience International)の専門家へのインタビューを中心に構成されています。
同記事内のインタビューによると、女性はアフリカの農業における労働力の55%を占めており、アフリカの農業生産において重要な役割を担っているのにも関わらず、土地や情報、金融などへのアクセスが男性よりも難しい状況にあると述べられています。
一方でそれは、農業における女性の地位・権利が向上することで、アフリカが抱える食糧供給や栄養不足に関する諸問題(アフリカでは約2億8160万人が栄養不足のリスクがある;詳しくはこちらの記事より)を解決するきっかけとなることを意味しています。
実際にCABIが発行しているレポートによると、世界の農業における男女格差を是正することによって、世界の栄養不足の人口は約100-150万人減少すると試算されています。
引用元の記事では、アフリカ各国での女性の地位向上によって得られる効果について具体的な数字で説明されており、土地の所有権を含む男女の意思決定権の格差をなくすことで、ルワンダでは19%、マラウイでは7%、エチオピアでは1.4%の収穫量の増加が見込まれるとされています。
土地の権利が阻む女性のエンパワーメント
引用元の記事内では、アフリカ農業における女性のエンパワーメントを阻む要因の一つとして、特に土地の所有権へのアクセスを挙げています。
こちらのFAOの調査によると、北アフリカでは女性の土地所有率は5%、サブサハラアフリカでは15%程度にとどまっており、男女間で土地の所有率に不平等が生じているという課題がまとめられています。
別の文献からより詳細に、その実態に迫ってみます。
こちらの論文で紹介されているデータによると、アフリカでも夫婦など男女が共同で所有している土地を含めると、男性が所有する割合が48%、女性が所有する割合が39%と、確かに男女間で差が生じているものの、それほど大きな差異はありませんでした。
一方で、単独所有のみのデータを見てみると、男性が31%なのに対して女性は12%しかなく、共同所有よりも高いハードルがあることが見て取れます。
また同文献内の別のデータを参照すると、アフリカ諸国における土地管理体制が未整備であることも課題の一つとして浮かび上がってきました。
例えばウガンダでは、家庭で共同所有している圃場が調査した農家の圃場管理における52%を占めていますが、そのうちの67%が正式な文書化手続きを踏んでいない土地であることが示されています。同様に、男性が単独所有している土地は全体の33%、女性の場合は全体の15%ですが、そのうち文書化されているものに限ると男性、女性でそれぞれ10%、5%しかありません。
これらのことを踏まえると、共同所有の土地、あるいは正式に文書化されていない土地にしかアクセスできない状態であることが、アフリカの女性農家の権利の獲得を難しくしている要因の一つであることが推測されます。
派生する課題
このような土地へのアクセスの低さは、その他の分野におけるジェンダー間の不平等にも派生しています。
まず一つは、金融へのアクセスです。引用元の記事では、土地をはじめとした資産へのアクセスが得られないことから、社会的な信用を獲得することができず、金融機関へのアクセスが制限される原因となっていることが示唆されています。
さらに引用元の記事では、デジタルツールをはじめとした、新しい農業技術、情報へのアクセスについても、男性と比較して不利な立場にあることが記されています。
私たちの過去記事で紹介したニュースによると、アフリカの若者の59%が土地へのアクセスに乏しく、それらがアフリカの若手農家のアグリテックの導入を妨げていると記されており、それと同様のことが起こっていると考えられます。
これらの事象が意味しているのは、土地の権利を持たないことが起因となって問題が発生しているのではなく、土地へのアクセスが立場の弱い人々にとって自身の社会的信用を示すカギとなるということです。
したがって、土地へのアクセスが改善されることで、他のあらゆるサービスへアクセスできる可能性が高まるということが考えられます。
今後の展望
今回の記事では、土地の所有権という視点から、アフリカの農村地域における女性の地位向上についてお話しました。
土地の権利というのは、あくまでも女性の地位向上を行うための手段の一つにすぎないですが、未だ各分野においてジェンダーギャップが根強いアフリカにおいては、特に重要なポイントとなりえます。
女性に限らず、土地の権利に関して正式な文書化を推し進めるなど、法整備を進めていくことも大切なことの一つかも知れません。
またビジネス面では、土地などの社会的信用がない小規模農家でもアクセスできる金融や保険などが、テクノロジーの発展により実現されつつあります。ご興味がある方は、以下の関連記事を是非ご覧ください。
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