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アフリカ・ルワンダ オフショア開発 / アフリカ進出支援コンサルティング
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こんにちは!Pick-Up! アフリカです。本日は、最近ホットなアフリカ観光の動向を、コロナが与えた影響にフィーチャーしてお届けします。

アフリカのビジネスといえば、天然資源やコーヒーなどの一次産品をイメージする方も多いのではないでしょうか。しかし最近はサービス業にも力を入れており、特に観光業も大事な収入源の一つです。日本からの旅行者も増えており、私の知り合いは新婚旅行にアフリカに行くと言っていました(笑)。

さて、早速中身に入っていきましょう!

コロナ禍の打撃とアフリカ観光業が得た教訓

参考記事:A Ticket to Recovery: Reinventing Africa’s Tourism Industry

先ほど述べたように、観光業はアフリカ経済の大きな財源で、2019年にはアフリカのGDPの約7%(1690億米ドル)を占めていましたが、AUの推定によると、コロナが始まった最初の3ヶ月間だけでも、全体で550億ドルもの損失を被り、観光業に勤める200万人の労働者が職を失ったとのことです。特に財政的救済を受けることができない中小企業への打撃はとても大きいものとなりました。つまり、外国人観光客の大幅な減少によって観光業界全体が大打撃を受けたことになります。

言い換えるならば、従来のアフリカの観光業に関わるビジネスがいかに外国人観光客に依存していたかを如実に表す形になりました。これはデータにも現れており、WTTC(世界旅行ツーリズム協議会)の統計による国内依存度のデータでは、2019年時点でアフリカにおける観光支出のうち、国内観光はたったの55%しかありませんでした。(北米は83%、ヨーロッパは64%、アジア太平洋は74%と、他地域では国内観光客への依存度が断然高いことがわかります。)

特に東部・南部アフリカは、欧米やアジアなどの観光客を狙い、サファリなどの観光地を売りにしています。実際に2020-2021年シーズンで、タンザニア・ウガンダ・ザンビアは、国際的な観光収入の3分の2が失われたとのことです。

国内観光客や地域内の観光客が少なく、観光セクターのサプライチェーンが脆弱なアフリカは、他の地域に比べ、コロナによる打撃からの回復が遅れることが見込まれました。

しかし観光セクターのレジリエンスを強化するためには、マーケットの多様化を測ることが不可欠と言えます。

ポストコロナの観光需要の変化と、新しい観光ビジネスのトレンド

参考記事:#WTMA23: How innovative solutions are reshaping the African travel industry in a post-pandemic world

次に、コロナを経て生じた需要の変化や新たなトレンドを見ていきましょう。

コロナのパンデミックがもたらした観光客の嗜好における変化

第一に、コロナを経て、旅行者は今まで以上に本格的な体験や自然とのつながりを実感できる観光を求めているようです。豊かな自然が備わったアフリカは、強みを活かし需要に答えられそうですね。

二つ目に、コロナによる規制が解除された途端、海外移住している人が家族や友人に会うために戻ってくる人が多く、アフリカ各国では飛躍的に航空券予約数が増えているようです。The Africa Reportによると、西アフリカにおける2019年と2023年の第1四半期の航空券予約数は、2023年の方が2019年と比べ25%も増加しているとのことです。

第三に、コロナ禍の制限から解放された観光客は、今まで以上に長期間かつ消費量の多い旅行をする傾向があるそうです。アフリカ旅行をするなら、1カ国で終わるのではなく何カ国も周遊したい方が多そうです。

近年のアフリカ観光ビジネスにおけるトレンド

最近のトレンドを6つ厳選してご紹介します。

①アフリカに希望をもたらす若者人口の増加とAfCFTA(参考記事)

アフリカ大陸では、中間層に位置する若者人口が増加傾向にあり、2021年に始動したばかりのアフリカ自由貿易圏(AfCFTA)が、国内・地域間観光(=大陸内の自由な移動)を促進すると見込まれています。実際の取り組みとしてビザ手続きの簡略化・撤廃が進んでいます。

主な取り組みには、①大陸内の他の国に渡航する際に本来必要となるビザの免除(ビザフリー)、②e-visa(ビザをオンラインで取得できるシステムで、空港や領事館で手続きをする手間が省ける)の導入、③アライバルビザ(事前にビザ申請する必要がなく、到着後に空港でビザを取得できるもの)があります。

①のビザフリーの進捗状況を見てみると(参考記事)、2022年12月現在でアフリカ全ての国にビザフリーを適用しているのは3カ国(ベニン、ガンビア、セーシェル共和国)で、5カ国以上にビザフリーを適用しているのは54カ国中42カ国です。

②のe-visaを導入しているのは24カ国で、2022年には南アも導入し、対象国を20カ国に拡大させることを目指しています。(参考記事)。③のアライバルビザに関しては、54カ国中24カ国は、5カ国以上の国に対してアライバルビザを適用しています。しかしアライバルビザに関しては、観光ビザは取れるものの就労ビザは取れないなど、制限のある国もあるため、目的によって旅行者は事前把握が必要になります。

現状の総括としては、アフリカ大陸内を旅行者の27%はビザなしで旅行できる、あるいはアライバルビザを獲得できます。しかし47%の旅行者はあらかじめビザを取得する必要があるというのが現状です。

2022年のレポートによると、ビザのオープン度が高い(=上記に挙げたシステム導入が進んでいる)国ランキングは、ベニン、ガンビア、セーシェル共和国が同立1位で、その後にガーナ、ルワンダ、ナイジェリア…と続いています。

また、こういった各国政府頼みの取り組みとは別に、大陸全体の取り組みとして「アフリカパスポート」というものがあります。これはアフリカ大陸共通のパスポートのことで、これがあれば大陸内をビザなしで移動できるという画期的なものですが、導入が順調に進んでいるとは言えません。しかしただの夢物語ではなく、アジェンダ2063の「15の旗艦プロジェクト」の1つであり、期待されている制度といえます。詳しくは、過去記事をご覧ください!

②テクノロジーを活用した観光ソリューションの台頭

近年のDXにおけるデジタルプラットフォーム、モバイルアプリ、AI、データ分析などのテクノロジーの台頭に伴い、アフリカでも観光ビジネスとテクノロジーを掛け合わせるようになりました。ITを活用することで、自分好みの体験やリアルタイムの情報、顧客中心で体験的かつ将来使い続けられるようなサービスを提供することができます

具体的には、TikTokやライブストリーミングといったツールや仮想体験を提供する技術、AIによるオススメ機能などを使うことによって、客を惹きつけることができるようになりました。

③混合型旅行

混合型旅行とは、仕事と旅行を同時にすることのできる旅行形態のことで、新たなビジネスとして注目されているものです。注目を集めている主要サービスとしては、従来の出張にプラスするレジャー、チームビルディングやリラクゼーションを目的とした企画、ユニークな体験を求めるデジタルノマド(IT技術を活用し場所に囚われずに働く人)向けのサービス、仕事とリラックスを融合したワークケーションなどが挙げられます。

④国内観光への再投資

国内観光を促進することは、観光業のレジリエンスを高めるために不可欠です。そして、国内観光客を引き寄せるためには、アクセスのしやすさや手頃な価格が鍵となってきます

この取り組みとして、いくつかの国々では観光地(国立公園、博物館など)の入場料を国民と外国人とで別々に設定し、国内観光者には安い価格にしています。

例えば世界遺産である南アのロベン島にある博物館では、国民は外国人向け入場料の約7割の値段で入れます。

また、ルワンダのアカゲラ国立公園では、さらに段階分けを行っており、ルワンダまたはEAC(東アフリカ共同体)に住む国籍所持者は16ドル/日、ルワンダまたはEACに住む外国人は50ドル/日、どちらにも属さない外国人は100ドル/日と、かなり差をつけています。

⑤ニッチな観光

近年は体験型のニッチな観光への需要が高まっています。ニッチな観光とは、ワイン旅行、医療旅行、文化旅行、アドベンチャー旅行、スポーツ旅行などの、ニッチな部分にフォーカスした旅行のことで、各国の強みを活かし、効果的に集客することです。

⑥サステナビリティ追求型観光ビジネス

近年の観光業では、いかにサステナブルな形でビジネスをするかという部分にも焦点が置かれているようです。具体的な工夫として、連泊時にタオルを毎日替えないオプションや、ゴルフカートの代わりに自転車で移動するなどといったものが挙げられます。

ポストコロナで奮闘する各国の取り組み例

ここでは、いくつかの記事を参考にしながら取り組み例をご紹介します。

①南アフリカの取り組み(African tourism set for rebound after pandemicより)

南アでは2023年5月、コロナ後の変革の取り組みとしてAfrica’s Travel Indaba 2023という観光トレードショーが開催され、数多くの商談や出展が注目を浴びました。

南アでも国内観光を促進する努力がなされており、例えば美しいビーチのあるダーバンで治安改善のための厳しい取り組みが行われたり、民間セクターとの協力を進めたり、低価格での観光提供を目指したりしているようです。その結果、南アでは2022年1月〜12月にかけて観光客が増え(インバウンドは152.6%増加!)約580万人に達しましたが、そのうち400万人はアフリカ諸国からの観光客だったそうです。

②ケニアの取り組み(A Ticket to Recovery: Reinventing Africa’s Tourism Industryより)

現地観光を促進するアフリカのリーダー格であるケニアでは、コロナ以前も、ケニア在住者が国内旅行する際に宿泊数の占有率を55%上げました。そしてコロナ禍では、さらに観光名所の目玉である動物保護区域の入場料を1年間全て無料化し、現地住民の観光客を増やそうとしました。また、デジタルマーケティングや国民の可処分所得の増加、五つ星リゾートの代替となる手頃な場所を作る努力がなされています。

③大陸内外の交通の便を改善する取り組み(The Africa Reportより)

アフリカが世界経済への参加度合いを高め、観光地としても人気を集めつつある中、他大陸からの交通の便がよくなってきました。例えば、ガーナの空港がアメリカの空港と繋がり、ヨーロッパからタンザニアへの交通の便が改善され、この2カ国へのインバウンドが増えました。

そしてアフリカ大陸内の交通の便も改善されつつあります。例えば、アジェンダ2063のプロジェクトの一つ、「アフリカの単一航空市場(SAATM)の創設」が進めば、アフリカ大陸内の移動の自由度は飛躍的に上がることになります。SAATMとは、参加国の航空会社に無条件での航空市場開放を求めるもので、これにより航空市場の統合への一歩が進められます。この取り組みは、アフリカの航空業界を発展させるだけでなく、アフリカ各国を繋ぎ、社会・経済・政治的な統合を促進し、大陸内貿易や観光業をも活発化させる役割を果たします。

近年、アフリカ各国の航空会社は、それぞれ発展を見せたり、課題に直面したりしてきました。

例えばエチオピア航空は、マーケットの拡大やオペレーションの効率化などを通じて、近年売り上げが急激に増加しました。また、ルワンダ航空も2012年から2019年で売り上げが4倍以上に伸びました。この背景には、新しい航路を増やしたこと、長時間飛行が可能な航空機を得たことがあります。

一方、南アフリカ航空はオペレーションにかかるコスト、非効率な運営などが原因で、2012年〜2019年で売り上げは二分の一以下に下がってしまいました。

また、ケニア航空も、燃料価格の高さや競争の激しさなどに苦しみ、売り上げは少し上がっているものの、停滞傾向にあります。

そんな中でSAATMによって大陸全体で航空輸送サービスが自由化されれば各航空会社間の競争率を上げるだけなく、オペレーションコストを下げる可能性も秘めており、アフリカ全体でこの産業の活発化が促進されるでしょう。(参考記事)

SAATMのプロジェクトは2022年11月に始まったばかりですが、すでに進捗が見られます。

その1つが南アフリカ航空とケニア航空の連携で、2024年に大陸規模の航空会社(パン=アフリカ航空グループ)ができる予定だそうです。現在はガーナセネガル間の新路線創設を試みているようです。(詳しくはこちらの過去記事をご覧ください!)

また、ルワンダはアフリカ大陸内外のハブとなるべく、事業を進めています。(Rwandair Plans To Make Kigali A Central Hub To Boost Regional Serviceより)

現在、ルワンダのキガリ空港はロンドン、UAE、ブリュッセル、ドーハなどの国際的な航空会社と繋がっており、さらに大陸内の各国とも繋がれるように取り組んでいるようです。

また、南アでも大陸内の国々への直行便開設を増やしており、今年5月には直行便で行ける国が11カ国に増えたことを祝っていました。例えば今年6月からエスワティニへの直行便、7月からザンビアとの直行便を運航するようです。

おわりに・次回予告

最後までご覧くださり、ありがとうございました。

アフリカの観光業は、観光ビジネス自体の成長だけでなく、 AfCFTA・アジェンダ2063などの様々な取り組みと密接に結びつき、影響を受けながら進歩を重ねており、またそういった取り組みの成果を如実に見て取れる例として、とても興味深いものです。

さて、次回の観光シリーズでは、アフリカ旅行を実際に考えてみようということで、今年の夏に訪れるべきオススメの観光国をご紹介します。お楽しみに!

Pick-Up!

Continue reading アフリカ観光業:コロナ前後でどう変わった?進化し続ける観光業、新しいビジネスの形とは?【コラムーVol.17:2023年7月14日配信】 at Pick-Up! アフリカ.

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